アダルトサイトからの不当請求

私のケース

身に覚えのある場合どう対処するか。

(身に覚えが全く無い方は、巷のアドバイスにあるように徹底的に無視し、職場や家族、ご近所まで電話や手紙などで請求があった場合には、即、警察に訴えて事件にしてもらえばよいのですから、消費者センターや地方自治体からのお知らせ、警察関連のページを参考にしてください。ここでは、あくまで身に覚えがある方を対象にアドバイスを書いています。) 急ぐ人はここへジャンプ

序章

 

このページを書こうと思った背景は、突如として私の身に降りかかったこの問題が、しばらくの間、仕事も手につかないほど私を苦しめ、これだけある相談窓口や専門家が必ずしも力になり得ない、あるいは誤解を生むようなアドバイスを与えかねない状況に危機感を感じたからです。また、法整備の遅れからか、このようなビジネスの形態を許していることにも強い疑問を感じるのです。上にも書きましたが、身に覚えの無い方の対処方としては、完全無視(ただし裁判所からの通知などは一部無視できないものもあるので注意が必要)、情報を出さない。またスパムメールや(ワン切りなどの)ランダムコールなら、こちらから発信や返信をしないことで十分に安全です。ところが、こちらからサイトを利用したという形跡を残してしまった場合には、対処法が複雑になります。つまり、自分からアクセスしたのが事実だと認めざるを得ないケースです。しかも、悪徳業者は、利用料金の請求額が法外に高かったり、延滞金と言って不当な損害賠償金を請求してくるのが常套手段です。また、相手の住所がわからない、法人格を特定できないなど、問題を益々複雑にしています。あなたがもし私の経験したことに近い状況にいるならば、決して軽はずみな行動(今以上の情報を出したりお金を振り込むなど)をしたりせず、私のケースからあなたと共通の部分と異なる部分を見つけ出して冷静に対処法を判断してください。冷静さを失っているかもしれないあなたへの最も重要なアドバイスは、なんと言っても相手の不合理な要求には一切応えないことなのです。

 

経緯

 

今年の夏、自宅にかかってきた不審な電話。この時には、問題がわが身に降りかかっていることを知る由もありませんでした。その電話は、自動音声案内のようなもので、何かの利用料金の支払い案内のような内容でした。もちろん、何の事かわからないので、案内には従わず、すぐに切ってしまいました。私は、かなり以前から、ナンバーディスプレーを導入していたので、この最初の不審な電話の番号をその場で記録しておきました。その後、何事も無く、ひと月以上経過した9月の中旬、今度は男性の肉声で、アダルト音声番組の利用料金についての請求が留守番に入りました。脅迫的な調子ではありませんでしたが、社名を語らず、自分の名前と料金の回収のためにかけていて、延滞金は毎日加算されていると言うような内容で、すぐに連絡がほしいと言っていました。先の電話番号とは異なる市外局番の電話からでした。これは、最近注意を呼びかけている「アダルトサイト利用料金の架空請求」だろうと思い、そのままにしておいたのですが、実は、この電話以前に、留守電の録音にこそ入っていなかったものの、フリーダイヤルの局番 (0120)を含む、なじみの無い番号の着信記録が自宅の電話に残されていたことに気づいていました。念のため、県の消費者センターなどと連絡をとり、情報の提供と指示を仰ぎました。この時は、私にとって、「身に覚えの無い」請求だったので、センターの相談員からは、類似事件の注意を呼びかける掲示板にあるような一般的なアドバイスをもらいましたが、これで不安が一掃されたというよりは、今まで調べておいた架空請求対処法を再度確認したというくらいのものでした。

 

事件

 

「身に覚えが無い請求なら相手にせず、完全無視」という鉄則に従い、先の電話番号から再度電話がかかってくることも考えて着信拒否の設定に登録しておきました。その後、一、二度、同一番号の着信履歴がありましたが、連絡が付かなければ、いずれこれで諦めるだろうと思っていました。ところが、次の週末、ある携帯電話の番号で留守電が入りました。「OOさ〜ん。□□です。090-xxxx-xxxxまでお電話ください。」と、私の名前OOを呼びかけて、折り返し電話を求めるものでした。てっきり知り合いからの電話だと勘違いし、そこに電話をいれると、なんと例のアダルト音声番組の料金回収業者の担当者でした。多少、動揺しましたが、こちらは身に覚えの無かったのでかなり強気で、何かの間違いだろうと言うと、なんと、相手からは、利用日時、電話番号、番組名、料金後払い選択などを告げられました。内容があまりにも具体的だったので、頭をよぎるものがありましたが、まさかと言う思いと勢いもあって、そのまま一方的に電話を切りました。

 

身に覚え?

 

念のためメモにとった日時を確認してみると、昼間の時間帯でした。正直言って、男性ならインターネットのアダルトサイトへアクセスしたことが無いという人は稀でしょうし、私も見に覚えがしかしコンピュータから個人情報が漏れるような設定は、無かったはずだし、ましてや、昼間の時間帯です。そして、ふと思い当たる節があったのは、息子のことでした。そう言えば、以前、家族で共有していたコンピューターのブラウザに不審なアダルトサイトへのアクセス履歴が残っていたことを思い出しました。すぐさま、帰宅した息子(未成年)に問い詰めると、歯切れの悪い態度でしたが、例のアダルト番組へ電話をかけたことを認めたのです。事情はこのようでした。ある日、立ち寄ったコンビ二で見たアダルト雑誌の広告にフリーダイヤルの成人番組があり、その番号を覚えて、次の日に自宅から電話したと言うものでした。本人は、有料番組だとは思っていなかったようです。

 

どうすればいいの?

 

これで状況が一変しました。「身に覚えの無い不当請求」と言えなくなったからです。この時には、まだ請求金額は知らされていませんでした。早速、週明けに役所と消費者センターの相談窓口に電話を入れて、対処方法を尋ねました。ところが、困った事になってきました。相談員は、「利用した料金は払うのがあたりまえだが、この手の業者は、不当な料金の請求が多いので、よく内容を聞いてから、正当な請求に対してのみ支払えばよいはずです。」と言うのです。立場的に「よくわからないものは踏み倒しなさい」とは言えないわけです。つまり、「不当な請求を受けるのは、ほぼ間違いないが、利用料金と法で定められた上限を超えるような延滞金を支払う必要は無いから、自分で交渉して、それで話をつけなさい。」と、言っているわけです。このときの、延滞手数料(損害金名目であっても)は、消費者保護法(消費者契約法)14.6% を超えてはならないと言うことでした。もちろん、ちょっと勉強すれば、そんなことはわかります。問題は、正しい答えがどうのと言うこと以上に、誰がそんな詐欺師とも似た輩と脅迫まがいの請求についてまともに交渉できるかということでした。とにかく請求額がわからないのでは、話にならないので、早速、請求元に電話を入れて担当者につないでもらいました。ちょっと、怖い感じでしたが、利用料金の説明をしてもらうと、なんと利用料金は基本料金の千円だという。ちょっと奇異に感じましたが、すぐにその意味がわかりました。担当者は続けて、「延滞手数料が一日千円かかっている」と言うのです。そして請求額はすでに十万円を超えていると言ってきました。すかさず、14.6% の話をしましたが、「これは損害賠償の取り決めとして、民法420に則って事前に取り決めをしているものですから」と言われてまた戸惑ってしまいました。そして相手は、いつ払ってもらえるかと聞いてきます。さらに、お金が用意できたら払い込み用の銀行口座番号を教えると言ってきました。(ところでこの一般法である民法420条ですが、現在では先の消費者契約法=特別法が優先するので、全く意味の無い根拠となります。このときはそんなことも知るはずもありませんでした。)

 

問題はどこにある?

 

私は、相手が私の住所と氏名を知っていることを察していたので、すぐに請求書を送ってくれるようにお願いしました。ところが、それはできないと言うのです。金額が日々増えているというのが先方の理由でした。しかし、会社名は名乗らないし、所在地もわからないという状況はとても不自然です。しかも、請求の電話こそしつこいのに、これまで振込先や請求金額さえも伝えてこなかったのはなぜだろうと思いました。(恐らく複数の口座が用意されていて都度使い分けをしているなどの理由からでしょうか。)とりあえずその場は、すぐに支払いの約束はできないことを、弁護士と相談し始めていることを口実にいったん電話を切りました。金額の交渉などまともにできる筈が無いとの思いが益々募ってしまう結果になってしまいましたが、念のため請求金額を先の相談員に伝えました。もちろん予想通りの回答でした。「請求は間違っている」という繰り返しです。警察にも相談しましたが、「なんでそんな損害金を払わなくちゃならないんですか!」の一点張りで、そのうちまるでこっちが悪者のようにさえ思えてくる始末です。確固たる脅迫や詐欺あるいは詐欺未遂の証拠でもない限り、警察も民事不介入?これがこの仕組みの限界とでも言えばいいのでしょうか。せめて、無料とは言わずとも、先方と交渉してくれる代理人になってくれる方はいないだろうかと尋ねてみましたが、「弁護士会に相談してみてはどうか」と言われてしまいました。そしてもうひとつ重要なことは交渉をする事のほかに、交渉相手の問題もありました。つまり、自分が誰に請求を受けているかがわからないと言うことです。電話を掛けた先と、料金の請求をしてきている相手が同一であるかどうかは不明だからです。最近の不当請求は、複数の正規の債権を有しない者からの請求(つまり詐欺行為)です。仮に、この請求者に支払いをしても本当に債務が精算されるのかがわからないと言う不安です。この点についても相談員や警察は、全く頼りになりません。支払い先が、詐欺師かもしれないと言うのに、何のアドバイスもできないのです。

 

決断は弁護士へ委任すること、でもどこの弁護士?

 

悩んだ挙句、相当の費用を払っても法的に処理するほうが、将来への不安を払拭できるだろうとの思いで、弁護士への委任を決めました。ちなみに、先の業者からの請求額は、この時点で十万円弱であり、弁護士費用は、着手金だけで十万円、それに実費と成功報酬16%などを考えても決して安い選択ではありませんでしたが、請求元を特定しない限り、将来にわたる不当請求の恐怖に付きまとわれることを考え、その対応が最も適切だと判断したのでした。それに、仮に業者へ支払えば、「カモ」リストに載って、悪徳業者のあいだで次のネタに利用されないとも限らないので、これらを法的にブロック(和解契約)する必要性も感じていたのです。まず知り合いのツテで、地元の弁護士事務所に電話を入れてみました。ところが、やけに腰が引けてるのです。あまり話もしないうちに、結局、「弁護士会に相談してみてはどうですか?」と言うことになってしまいました。仕方なく弁護士会に相談して一人の当番弁護士を紹介してもらいました。そして予約を入れて有料相談に行ってきました。どうも、雲行きが怪しくなってきたと感じたのは、やはりこの弁護士も、「自分は当番だから相談を受けている」と言って、暗に関わりたくなさそうな気配からでした。「まあ、そりゃあ弁護士だって仕事を選ぶか。」と妙に納得しましたが、内心、不安でいっぱいでした。

 

捨てる神あれば拾う神あり

 

これまでの経緯で、地元の弁護士では、請け負ってもらえないと察した私は、これまでにインターネットで調べておいた関連サイトの情報の中に、類似した事件を扱ったことをHPに掲載していた法律事務所を捜し当てました。他県にある弁護士事務所でしたが、電話で相談に応じることと、主に消費者問題を中心に取り組んだ実績から信頼できそうだと確信しました。早速、電話を入れてみると、受付を通して担当者に電話が回され、状況を説明するとすぐに受任準備をするとの回答を得たのでした。今まであたった弁護士とは、ずいぶん違う対応だったので、「やはり弁護士もいろいろだなぁ」と妙に感心すると同時に、とてもホッとして、熱いものがこみ上げる感じさえしました。世の中には、こんな金にもならない仕事を引き受けてくれる立派な人もいるもんだ、と神様に感謝する気持ちにもなりました。そして、委任して約ひと月半経過後、弁護士事務所より連絡があり、番組提供者と請求元の法人格の特定および、未成年者契約の取り消しと個人情報取り扱いに関する守秘義務を含む和解契約書の取り交わしを完了し、そのコピーが送られてきました。息子がかけた一本の電話が十数万円の出費と精神的苦痛を生んだこの事件もようやく一件落着となりました。息子も、今回の事件では、少しは、こたえたと思います。(親:かんべんしてくれよ〜)

 

Bookmark

まとめと役立ったサイト

 

ポイント1: 身に覚えのあるケースでは、2次被害拡大を食い止めることに主眼を置く。

個人情報はどこまで知られたか?それによって対応を変える。

ポイント2: 身に覚えのあるケースでは、消費者センターも警察も的確なアドバイスを用意していない。

ポイント3: 倫理性はともかく、争う気力があれば、料金を踏み倒す覚悟で臨め!

「使った分は、払わなければ」などという寝ぼけたアドバイスには耳を貸すな。

見えない相手としたたかに闘え。払って欲しけりゃ取りに来い!

ポイント4: 相手を特定して、交渉の場へ引き出せ。登記上の法人名、所在地および代表者名は?

ポイント5: 請求してくる者が債権者とは、限らない。債権回収はたれにでも許された権利ではない。

                       請求書が出ないなら支払う義務なんか無い!

ポイント6: 悩むくらいなら弁護士に依頼しろ。詐欺師に貪られるくらいなら十数万円は安いと思え。

ポイント7: 弁護士にも、得意な分野や意識の違いがある。信頼の実績で事務所を選べ!

ポイント8: 民法420条なんてクソ食らえ。特別法優先の原則を知れ。騙されるな!

 

<<< 役立つサイト(身に覚えのあるケース)>>>

インターネット消費者被害対策弁護団

ネット被害相談過去ログ集

「不当な料金請求」特別対策調査室

悪徳商法?マニアックス

弁護士ランキング(個人のサイト)

 

 

迷ったらメール(お休み中)

 

危険性

 

インターネットを使用していると、氾濫する情報の波間に、つい色気を出して踏み込んでしまいがちなアダルトサイトの罠。実しやかに、多くの場合、IPアドレスなどによる個人の特定は困難だ(匿名性が高い)とされています。しかしながら、ユーザーは、ISPを通して自分のコンピュータが、ある程度、特定される可能性のあることも認識しておかなければなりません。例えば、あなたのIPアドレスはもしかして固定アドレスではありませんか?そうでないにしても、フレッツの利用者の場合、いくつかの決まったアドレスが割り当てられるケースも多いようです。しかも、アクセスポイントまでは、簡単に知ることができます。つまり、もしあなたが頻繁に特定の「いかがわしいサイト」にアクセスしているとすれば、そのサイト運営者は、アクセス元のIPアドレスの記録を見るだけで、概ね、あなたがお得意様であることを知っているという事です。正確には、「アクセスしている人物こそわからないが、あなたのコンピュウータがアクセスしていることを知っている可能性がある」という事です。さらに、あなたの知らない間に、その悪意のサイトから特殊なソフトウエアがダウンロードされていたりした場合、匿名であるべきあなたの身元を、E-mail アドレスや以前どこかのサイトで入力した個人情報などを自動収集し、その悪意のサイトへ送信している可能性もまれに否定できません。すなわち、あなたは、いつでも悪意の第三者に、身分の開示をさせられる危険にさらされながら、インターネットを使用しているということです。そして、いったん、それが相手にわかってしまえば、いわれの無い言いがかりをつけられて、サイトへのアクセス(利用)料金を不当に請求されるきっかけになる可能性があるのです。(もちろん無視し続ければ(注)いいわけですが

 

さらに、これが電話の場合、もっと危険が高まります。つまり、携帯電話でアダルトサイトや出会い系サイトにアクセスしている場合、多くは、その電話が利用者個人の所有物であるため、悪意のサイト運営者は、容易にあなたを利用者と断定し、法外な利用料金を請求してくる可能性があります。もし、あなたが、はじめからサイト利用が有料だという認識があり、その利用請求額にも何の疑問もなく、納得するのであれば、おそらく指定された銀行口座にその請求額を振り込むでしょう。これは当事者にとって特に問題ではありません。少なくともこの時点では。でも、依然あなたは相手を特定できないでしょうし、相手に多くの個人情報を与える結果になり、2次被害者予備軍へ登録は免れません。こう考えると私たちが何気なく使っているインターネットや電話などの通信手段には、法整備の遅れを背景に、けしからん輩が、様々な技を駆使して私たちを落とし穴へ引き込もうと企んでいるということがわかるでしょう。

 

それでもエロはやめられない? それが人類繁栄の理由であることも確かなのですが