PORSCHE 928 S4  1990

 

 

 

 

 

かつてポルシェは水冷エンジンをフロントに置きトランスミッションをリアに備えた重量バランスに優れたトランスアクスル方式を採用した高性能スポーツモデルをラインナップしていた。1976年に発表された924に始まる4気筒FR量産モデル(LINK)は、944とその後継となる968へと続くことになる。これらをポルシェのスモールモデルと位置づける一方、遡ること1977年、来たるポルシェの新時代を託すべく、911 に代わるポルシェのフラッグシップモデルとなる928が投入された。928もまた、前年に生産が開始された924 と同様にフロントエンジン・リアドライブのトランスアクスル方式を採用する高性能スポーツモデルであった。924は水冷4気筒エンジンを搭載し、設計こそポルシェが行ったもののパーツは既存のVW・アウディーモデルと共有部分が多く、その生産ラインもアウディー工場を用いるという、ある意味VWグループとの合作のように見られていたのに対し、928は、V型8気筒の水冷エンジンをはじめとして全てが純血のポルシェであり社運をかけて設計し製造する力作となった。

 

ちなみに944の高性能エンジンは928のV型8気筒エンジンの片バンクを利用したものだったが、これは944の開発段階で試されたいくつかエンジン候補の中で、特にその出力特性が944のシャーシーに求めていたものに近かったためだと言われている。確かに944を924の後継モデルとするのが一般的な見方ではあるが、それは944のスタイルが924カレラGTの流れを汲んでいることに起因するものだが、別の観点からは944を928のスケールダウンモデルと見ることもできる。そういう点では、ポルシェの水冷FRモデルは、どれも全く別物と言うわけではないのである。

 

80年代に入るとFRポルシェの実力は既に実証されていたが、特に924〜944(LINK)では国産スポーツカーの開発ベンチマークとされ、このころになるとポルシェ社自身も911の後継車種としては928よりもこちらのスモールバージョンを意識するようになっていたに違いない。944にはポルシェの手法どおりTurbo が追加され動力性能が強化され世界第一級のスポーツカーとして完成した。一方の意に反して(?)人気の衰えない911には4WDがラインナップされ、911のピーキーなハンドリング特性を補う以上の出来栄えに世界中のスポーツカーメーカが目を見張った。同時に911終焉のシナリヲは水面下で見直され始めていたかもしれない。その間、928はさらに大型化が進みラグジュアリー路線を究めていくことになり、その個性は他のモデルと明らかに異なるものへと進化を遂げていった。

 

このように書くと、928には如何にも鈍重でおとなしいイメージを伴ってしまうが、それは決して正しいわけではない。初代928が搭載した水冷V型8気筒エンジン(LINK)は、4.5L、240HP 35.6kgm  のスペックを誇り、当時の自動車評論誌などによる実車性能比較においても加速性能で自社の930ターボにこそ僅かに及ばなかったもののイタリアのメーカーをはじめとする他のスポーツカーを凌駕するトップクラスの運動性能が実証された。また、当時のスポーツモデルには極めて珍しく、車載コンピューターやオートクルーズさらにはオーディオに留まらず内装の細部に至るまで装備はかなり豪華で、ポルシェのフラッグシップを担うにはふさわしいものであった。加えて911よりも流麗で洗練された外観は、シリーズ最後のモデルとなる928GTS(LINK) (5.4L V8 350HP 51kgm 0-100Km 5.7s 最高速275Km/h)が1995年にその生産を終えるまでの20年近くもの間、この美しいシルエットを踏襲し続けた。奇跡的なことは、さらに10年を経た現在においてもまったく古さを感じさせないどころか、Type996以降の リアセクションのスタイルに影響を与えているとさえ言われている。

928はスタイルやスペックだけでなく技術的にも斬新で、リアにバイザッハ・アクスルと呼ばれる4WS機構を備えるなど当初から先進的な走りを追及したモデルであった。実際に走らせると、1.8mを超える車幅と1.6t を超える車重が信じられないほどに俊敏でその動力性能が本物であるとこがわかる。軽快なピュアスポーツを追及した911とは明らかなドライビングフィールの違いはあるが、高速安定性は言うに及ばずタイトなワインディングロードでもその完璧な重量バランスが裏付けるように一流の操縦安定性が保証されていた。(ちなみに、ポルシェ928は1978年度欧州カーオブザイヤー(LINK)にも選ばれているが、同賞の第一位をスポーツカーが受賞することは歴史的に見ても極めて異例の事であった。) にもかかわらず、高い価格設定や当時のスポーツモデルには似つかわしくない極めて豪華で快適なコックピットと大柄なボディーは、パーソナル高級サルーンと揶揄されることもあり、当時のマニアックなスポーツカー愛好家の評価を渋らせた。

 

 

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写真の928は、1987年から投入されたS4(LINK)(5L V型8気筒 320HP 43.9Kgm ) の1990 年モデル(日本仕様)で当時ミツワ自動車が関東地区で販売した個体である。著者が初代オーナーの車両を中古外車ディーラーを経由して購入したもので、極めて状態の良い車両であった。特注の内装は豪華な赤の仔牛革を全面に用いてあるが、ほとんど傷みは見られない。新車登録時から正規ディーラーで保守整備がなされており、現在走行7万キロ強の車体は、タイミングベルトおよびウォーターポンプの交換をそれぞれ走行4万〜5万Kmの間で行っている(本来は同時に行うのが理想的(LINK))。大きな故障は、4万キロ後半にトルクチューブ(センターシャフト)を破損しディーラーにて交換している。今、928の購入を検討されている方はこのトルクチューブの問題(LINK)は熟知している必要があり、異音(LINK)のある個体の購入は控えるべきだろう。ちなみに、ディーラーにて交換歴のある車両は、ディメンジョンと材質を変えた対策品を使っているとのことなので、再発の可能性はほとんど無いらしい。著者が購入してからは、ディーラーにおいてフロントブレーキのローターディスクとリアタイヤを新品に交換した。(記録簿の抜粋) また社外装備として10連CDチェンジャー、DVDナビ、およびETCを備え、高速クルージングはもとより日常的使用をも快適なものにしてきた。その後、縁あって第三のオーナーへ譲り渡すことが決まった。

 

ところで、斬新なコンセプトをもって華々しいデビューを飾った928ではあったが、911のユーザーが最後まで928に移行することは無く、またレースシーンで活躍する911のようなカリスマを得るには至らなかった。928がその本領を発揮する舞台はサーキットではなく、アウトバーンのような高速道路であり、ヤングエグゼクティブの高速移動手段としての退屈なイメージが定着してしまったのかもしれない。事実、製造した車両の多くがATだった。純粋で武骨なスポーツカーとして生まれた911は、時を経て装備や快適性までも手に入れたType993へ発展する90年代の中頃になると、これが911フリークのみならずより広いユーザーの欲求を満たすことも可能となり、20年前にポルシェが928に託そうとした未来は、次世代水冷911(Type996)が担うことなり、1995年928はその完成形とも言うべきGTS を最後に18年間の長きに渡って勤め上げたポルシェを代表する旗艦としての任務を終えることになった。 (2005年2月 著者、同6月加筆訂正)

 

リンク集

食堂会議の家: 国内最大規模のポルシェ928に関する掲示板。過去ログの検索機能も充実

9倶楽部(東北支部):     檸檬ちゃんのページ。ポルシェだけじゃない東北のクルマ好きが集う掲示板あり

9倶楽部(本部): 944を中心とした水冷FRポルシェのページ。オフミの画像もあります。

キャナルさん

KN さん

R-Wind さん

Car PCさん

ポルシェ・ジャパン

ポルシェセンター仙台: 928にも詳しい東北唯一の頼れる正規ディーラー

日之出モータース: メンテのみならずパーツ類が充実

PERFORMANCE PRODUCTS : 海外のパーツ通販

928 INTERNATIONAL: 海外のパーツ通販 メンテナンス情報も多し

Lindbergh: 洋書類の通販

Car Collection: スーパーカー&希少車情報 スペックやメンテナンス情報

 

番外リンク集

           株式投資家への道

           928復活の噂

           ケイマンS登場

           パナメーラ (ポルシェ第四のモデルは4ドア4シーターの高級スポーツ)

           911 (Type997)  プロモーションビデオ (右クリックで対象をセーブしてご覧ください)

ポルシェに関しては不思議な事実がある。それは、それを欲しいと思う瞬間があり、そしてそれを実際に手に入れる瞬間があるとすれば、その間には10年や20年という歳月が流れているだろうということ。あなたが最初にポルシェを欲しいと思ったのは、遠い昔、あなたが少年の頃であったかもしれない。この映像の著作権は全てDr.Ing.h.c.F.Porsche AG に属しています。

現在の928の様子(冬眠中) Nov.23, 2005〜春まで…

 

イベントリンク集

           西会津ふるさとなつかしCar&バイク・ショー 2005 参加してきましたヨ。

 

車両購入のための検索サイト集

CARVIEW,  CAR SENSOR, GooWORLD, autobytel-japan, 車選び.com, 輸入車の窓口,

エンスーの杜(個人売買仲介)

 

 

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