8. 春、巡る

いくつかの記憶にある 春という季節には
今でも尚 今だからこそ 胸を打たれるものがあり
満開の桜よりも その役目を終えて
水たまりに漂う花びらに 自分を重ねたりします

ただ漠然と 「時間には限りがある」 なんて
焦りを感じながら 節目の時期を迎え
「ほんと、一年経つのが早くなったね」 なんて
つい口走りそうになる自分に 時々身震いを覚えます

明日のことを考えるフリをして 寝ころんでいたあの頃のにおい
春の雨に打たれている
「暇じゃねえよ」なんて口ぐせのように言っていた 強がりの理由は
春の風がさらっていく

換気扇ごしに 弾ける通り雨の音
ふりだしに戻りたくて 夜道をふらつき
テレビゲームみたいに リセットボタンは押せなかったけど
濡れた体に落ちついて しばらくそのままでいました

気が付いたらいつも 側に誰かがいて
折れたシャープペンシルの芯のように 時は過ぎ
一人みじめに吐き出した 白い煙は
孤独を隠すつもりなのか 部屋の静寂を埋めていきます

与えてもらった ありがたい金網から
出ることに必死だった 青い春をふり帰る

「後悔することなんて無意味だ」 って言いながら
甘酸っぱい春の風に 思わず胸を締め付けられる

暑くも寒くもない 始まりと終わりの季節
向こう見ずの弱輩者 曖昧な色に霞んでいく